2011年05月28日

中田君過労死裁判の判決に思う

 「中田労災」の判決が、5月25日京都地裁第6民事部であり、原告の請求が認められませんでした。 
 「中田労災」は、22歳の健康な青年だった中田衛一くんが、2001年6月16日,一週間連続の夜勤明けに突然亡くなった過労死事件です。当時衛一くんが勤めていたトステム綾部工場に対し、衛一くんが亡くなったのは過酷な勤務による過労死だとして、損害賠償を求めていた事件です。私自身は弁護団員ではないのですが、この事件は労働者が健康に働いていくためにとても重要な事件なので、注目していました。

 判決は中田くんの過剰な残業勤務の立証が不十分であるとして、業務と死亡との因果関係を認めませんでした。中田くんの過酷な勤務実態はたくさんの証拠で明らかにしてきたのですが、この会社にはタイムカードがなかったために、中田くんの過酷な残業勤務について正確に勤務時間を立証することは不可能でした。そのことをとらえて裁判所は原告の立証が不十分としたのです。

 しかし、よく考えてみれば、使用者は労働者の勤務時間を把握し適切に管理する責任が法律で規定されているのです。タイムカードを置くべきことは厚労省が通達で指導しているところです。にもかかわらず、この会社はわざとタイムカードを置かなかったのです。
 ところで、この会社、京都府から地元雇用創出のために多額の補助金を貰っていたのに、リーマンショックの際、直ちに大量の解雇・雇い止めを強行したのです。そして、終には、工場を中国に移転してしまったのです。極めて悪質な体質を持った会社です。

 私は、かつて、地元の金融機関の残業代請求事件を京都地裁で闘いました。その銀行もわざとタイムカードを置いてなかったのです。コンピューターの立ち上げ時刻や開店時間、金庫室からの移動時間などを細かく計算して残業時間を計算することにとても苦労しました。
 タイムカードを導入することは、こうした大手企業にとっては簡単なことです。にもかかわらず、あえて導入しないのは残業時間を正確に把握されたくないからです。こんな違法を許してはなりません。労働時間を正確に把握することは使用者の義務ですから、裁判所は、労働時間の立証責任は使用者側にあると考えるべきです。使用者が、適正な勤務時間の範囲内で働いていたことを立証できなければ、使用者の立証が不十分であり、業務と過労死との因果関係が推定されるとの考え方に立つべきです。その意味から考えても京都地裁判決は誤っているのです。高裁での逆転勝利のためになお一層の支援をお願いします。
posted by 中村和雄 at 23:56 | みなさんの意見(1) | TrackBack(0) | 裁判

2011年05月23日

「『非正規』をなくす方法」

「非正規」をなくす方法 宣伝.pdf このたび、脇田滋教授と共著で「『非正規』をなくす方法」というタイトルの本を出版させていただくことになりました。税込み1680円です。わが国に広がる正規雇用と非正規雇用の格差を是正していくためにどうしたらいいのか、具体例なども入れて、なるべくわかりやすく提案させていただいたつもりです。
 けっして、むずかしい「法律書」ではありません。私が調査したデンマークの制度や脇田教授の調査された韓国の制度の紹介、公契約条例制定など最新の情報を満載しています。

 ワーキングプアを生み出す「非正規」雇用というわが国の働き方を是正していくために、本書が少しでもお役に立てればうれしい限りです。5月31日発売です。ぜひ、みなさんのご購読をお願い致します。
posted by 中村和雄 at 12:13 | みなさんの意見(4) | TrackBack(0) | 活動日誌

2011年05月15日

日弁連 公契約意見書

 日本弁護士連合会は、4月14日国や地方自治体に対して「公契約法・公契約条例の制定を求める意見書」をとりまとめ、5月10日付けで総務大臣に、同12日付けで厚生労働大臣に提出しました。 また、主要な自治体約120か所にも提出しました。総務省と厚生労働省に直接手渡しをしてから公表となったためにみなさんへのご連絡が遅くなりました。意見書は日弁連のHPに掲載しました。ご覧ください。「日弁連」で検索し、「会長声明・意見書」のコーナーをクリックしてください。4月14日付の意見書が掲載されています。

 意見書は、国や京都市も含む全国の自治体に対して、貧困問題・ワーキングプア及び男女間賃金格差の解消の見地から公契約に基づいて労務に従事する者たちの適正な労働条件を確保するために、公契約を規制する条例(公契約条例)を積極的に制定することを要請する内容です。
 これまでのご紹介したように、国や自治体の委託に基づいて仕事をしている方たちの労働条件が年年低下してきています。何重もの下請構造の中でピンハネされたり、仕事の取り合いの中で無茶な落札をしたりすることが横行しています。そのしわ寄せが、現場で労働する者たちの条件低下に繋がっているのです。こうした官が作り出すワーキングプアを解消するための有効な手段が公契約法・公契約条例です。国や自治体が、委託事業に現場で携わる民間の労働者の最低賃金を契約段階で規制するものです。すでに千葉県野田市と神奈川県川崎市で条例が成立しました。野田市では、清掃業務に従事する労働者の賃金が時給で100円アップしました。北海道の札幌市も公契約条例の制定を今年度中にすると市長が表明しました。

 東日本大震災の復興事業には大規模な公共工事が行われます。こうしたときに、公契約条例を制定し、新たなワーキングプアの出現を阻止することは行政の責任です。全国の自治体も同じです。残念ながら、京都市長はまだ公契約条例制定について前向きではありません。みなさんの声を大きく盛り上げ、京都市でもぜひ公契約条例を実現しましょう。

posted by 中村和雄 at 21:30 | みなさんの意見(0) | TrackBack(0) | 国政のことなど

2011年05月08日

東日本大地震被災地調査

P10004501.jpg 6日の夜に仙台入りし、昨日と今日の2日間、宮城県と岩手県の被災地の状況を調査してきました。JR仙台駅でレンタカーを借りて、津波の押し寄せた太平洋岸沿岸部を2日間で500キロ以上回りました。仙台港、塩釜、奥松島、石巻、女川、仙台市名取閖上地区、陸前高田、気仙沼。どこも想像を絶する惨状です。写真は気仙沼の中心部です。たくさんの大型船が街の奥深くまで運ばれてしまいました。周りの建物はすべて倒壊し押し流されています。一部で倒壊家屋の撤去作業が行われていますが、まったく手の付けられない状態のまま放置されているところも少なくありませんでした。

 テレビのニュース映像などで見ている感覚とはまったく異なり、その規模の高さと拡がりに唖然とさせられます。海岸線から遙かに遠い10キロ近くの場所でさえ、家屋が押し潰され流されているのです。またかなりの高台の上にも津波が押し寄せあらゆる構造物を根こそぎ押し流していました。
陸前高田や気仙沼は、まさに街がそっくり消えてしまいました。

 現地に行って、あらためて今回の被害の甚大さに驚かされました。地元自治体は何から手を付けて良いか今は混乱している状態です。国家的な支援で復興をしっかりと支えていかなければなりません。ただし、東京の霞ヶ関で中央官僚が勝手に絵を描くような計画ではダメです。地元住民の立場に立って、それぞれの地域の住民が主体となった復興計画の策定作業を地域住民が参加する形でしっかりとつくっていく必要性を痛感します。
 そして、京都でも大地震や原発事故に備えた防災計画をしっかりとつくっていくことが必要です。住民の側からも問題提起をしっかりしていかなければならないと感じます。
posted by 中村和雄 at 23:59 | みなさんの意見(1) | TrackBack(1) | 暮らし

2011年05月01日

門川市長 7100万円賠償

 新聞でも大きく報道されたとおり、門川市長が京都市に7100万円を賠償することになりました。正確に言うと利息が付きますのでたぶん1億円弱になるのではないでしょうか。最高裁判所が門川氏の上告を退ける決定をしました。
 京都市教育委員会が、2002年から3年にかけて一部の教職員に研究委託費として1人あたり5万円から15万円をばらまいたのです。しかも、研究の内容はチェックなしで領収証もとりませんでした。自分らが好きな教員にだけ、給与の他に特別に手当てを支給したのです。その責任者が当時教育長であった門川氏です。

 さすがにこんな出鱈目は裁判所は許しませんでした。一審の京都地裁も二審の大阪高裁も門川氏らに賠償を認めたのですが、門川氏は従わず最高裁判所に上告していたのです。最高裁判所も門川氏の訴えを退けたため、判決が確定しました。
 報道を読んだ知人が、門川氏はこれから返済で大変だと同情していました。しかし、みなさん、この賠償金は門川氏のふところからは1円も出ないのです。みやこ互助会という職員団体が門川氏に代わって支払うのです。うーん、これではせっかく裁判所がお灸をすえても反省できないのではないでしょうか。
 みやこ互助会はあまりにも教育委員会部局の賠償支払が多いため職員の不満が噴出し、近く解散することになりました。この団体の存在は、京都市の不祥事が繰り返されることを許してしまった一因と言えなくもないように感じます。
 ところで、門川市長の処分はどうなるのでしょうか。注目しましょう。
posted by 中村和雄 at 21:24 | みなさんの意見(3) | TrackBack(0) | 裁判