2011年05月28日

中田君過労死裁判の判決に思う

 「中田労災」の判決が、5月25日京都地裁第6民事部であり、原告の請求が認められませんでした。 
 「中田労災」は、22歳の健康な青年だった中田衛一くんが、2001年6月16日,一週間連続の夜勤明けに突然亡くなった過労死事件です。当時衛一くんが勤めていたトステム綾部工場に対し、衛一くんが亡くなったのは過酷な勤務による過労死だとして、損害賠償を求めていた事件です。私自身は弁護団員ではないのですが、この事件は労働者が健康に働いていくためにとても重要な事件なので、注目していました。

 判決は中田くんの過剰な残業勤務の立証が不十分であるとして、業務と死亡との因果関係を認めませんでした。中田くんの過酷な勤務実態はたくさんの証拠で明らかにしてきたのですが、この会社にはタイムカードがなかったために、中田くんの過酷な残業勤務について正確に勤務時間を立証することは不可能でした。そのことをとらえて裁判所は原告の立証が不十分としたのです。

 しかし、よく考えてみれば、使用者は労働者の勤務時間を把握し適切に管理する責任が法律で規定されているのです。タイムカードを置くべきことは厚労省が通達で指導しているところです。にもかかわらず、この会社はわざとタイムカードを置かなかったのです。
 ところで、この会社、京都府から地元雇用創出のために多額の補助金を貰っていたのに、リーマンショックの際、直ちに大量の解雇・雇い止めを強行したのです。そして、終には、工場を中国に移転してしまったのです。極めて悪質な体質を持った会社です。

 私は、かつて、地元の金融機関の残業代請求事件を京都地裁で闘いました。その銀行もわざとタイムカードを置いてなかったのです。コンピューターの立ち上げ時刻や開店時間、金庫室からの移動時間などを細かく計算して残業時間を計算することにとても苦労しました。
 タイムカードを導入することは、こうした大手企業にとっては簡単なことです。にもかかわらず、あえて導入しないのは残業時間を正確に把握されたくないからです。こんな違法を許してはなりません。労働時間を正確に把握することは使用者の義務ですから、裁判所は、労働時間の立証責任は使用者側にあると考えるべきです。使用者が、適正な勤務時間の範囲内で働いていたことを立証できなければ、使用者の立証が不十分であり、業務と過労死との因果関係が推定されるとの考え方に立つべきです。その意味から考えても京都地裁判決は誤っているのです。高裁での逆転勝利のためになお一層の支援をお願いします。
posted by 中村和雄 at 23:56 | みなさんの意見(1) | TrackBack(0) | 裁判

2011年05月01日

門川市長 7100万円賠償

 新聞でも大きく報道されたとおり、門川市長が京都市に7100万円を賠償することになりました。正確に言うと利息が付きますのでたぶん1億円弱になるのではないでしょうか。最高裁判所が門川氏の上告を退ける決定をしました。
 京都市教育委員会が、2002年から3年にかけて一部の教職員に研究委託費として1人あたり5万円から15万円をばらまいたのです。しかも、研究の内容はチェックなしで領収証もとりませんでした。自分らが好きな教員にだけ、給与の他に特別に手当てを支給したのです。その責任者が当時教育長であった門川氏です。

 さすがにこんな出鱈目は裁判所は許しませんでした。一審の京都地裁も二審の大阪高裁も門川氏らに賠償を認めたのですが、門川氏は従わず最高裁判所に上告していたのです。最高裁判所も門川氏の訴えを退けたため、判決が確定しました。
 報道を読んだ知人が、門川氏はこれから返済で大変だと同情していました。しかし、みなさん、この賠償金は門川氏のふところからは1円も出ないのです。みやこ互助会という職員団体が門川氏に代わって支払うのです。うーん、これではせっかく裁判所がお灸をすえても反省できないのではないでしょうか。
 みやこ互助会はあまりにも教育委員会部局の賠償支払が多いため職員の不満が噴出し、近く解散することになりました。この団体の存在は、京都市の不祥事が繰り返されることを許してしまった一因と言えなくもないように感じます。
 ところで、門川市長の処分はどうなるのでしょうか。注目しましょう。
posted by 中村和雄 at 21:24 | みなさんの意見(3) | TrackBack(0) | 裁判

2011年04月02日

赤と黒 非正規労働判決連敗

110330_204652.jpg 3月30日、31日と私が担当する2つの非正規労働者の裁判の判決が東京と京都であり、完敗しました。
 30日は,国立病院の賃金職員と呼ばれる嘱託職員たちの裁判です。彼ら彼女らは、国の機構改革で独立行政法人になった段階で「非常勤職員」と名称を変更されました。勤務時間を減らされたうえ、賃金が大幅に減少しました。東京高裁は、原告らは任用期限が満了したのだから身分を失ったのである。たとえ、これまで何年働いていようが関係ない。新たな非常勤職員としての採用はまったく新しい採用なので、どのような労働条件にするかは自由である、との許し難い形式論理で請求を認めませんでした。
 31日は、京都大学の時間雇用職員たちの裁判です。図書の入力業務を3年半にわたって更新されてきた契約について、京都地裁は、原告らが担当してきた業務は「家計補助労働、期限の定めのない契約を結ぶべき社会通念上相当な事情はない」と雇用継続を認めませんでした。原告らは、この仕事で得られる賃金で生活してきたのであり、誰かに頼って生活していたわけでもありません。また、「家計補助する立場の仕事従事者は簡単に首を切られてもいいのだ」というのではたまったものではありません。

 どちらの判決も、非正規労働者を物のように使いすてにしてきたこれまでの日本の雇用の仕組みを追認するひどい内容です。非正規労働者がいまどんな状況で働いているのか、どんな思いで仕事をしているのか、裁判所にはまったく届いていないようです。同じ労働者として保護していこうという発想が完全に欠如しています。

 どちらの事件の当事者も直ちに不服を申し立てることにしました。この国の働き方の仕組みを変えるためにも頑張っていきたいと思います。
 上の写真は国立病院賃金職員のみなさんです。判決日の夜、大阪に戻り集会をしたときの状況です。私は両裁判の判決において、この日のために験を担いで高いネクタイを締めて法廷に望みました。30日は青、負けてしまったので31日は赤。やはり、神頼みは通じないようです。
posted by 中村和雄 at 12:37 | みなさんの意見(4) | TrackBack(0) | 裁判

2010年11月12日

門川市長尋問の結果

 京都市教育委員会が2008年2月の市長選前に門川氏のインタビュー記事や顔写真などが掲載された本1400冊を定価で書店から購入し関係者に無償で配布した問題の住民訴訟で、昨日、門川市長(当時教育長)と江口参議院議員(当時問題の本の出版社代表)の証人尋問が京都地裁で行われました。たくさんの方が傍聴に来て頂き、大法廷の傍聴席が満員になってしまいました。せっかくお越し頂いたのに傍聴頂けなかった方々にお詫び致します。

 門川さんは、この本の中で2007年11月29日に教育長室でインタビューを実施したとして顔写真入りで掲載されている記事について、実はインタビュー自体が存在しなかったことを認めました。
 しかし、この本が2004年に企画されながらその後作業が頓挫していたのに、どうして2007年秋頃から急ピッチで動き出したのかについては、自分は関与していないし、報告も受けた記憶がないと証言しました。
 この本を関係者に無償で配布するために、教育委員会が1400冊を定価で購入することを決定したのは、2007年10月22日教育長室で行われた教育委員会の幹部会においてです。直接出版社から購入すれば2割引で購入できるのにわざわざいくつもの書店から定価で購入することにしました。この幹部会には幹部会の責任者である門川教育長も当然出席しています。このことは前回証言した教育委員会の担当職員が証言しています。しかし、門川さんは記憶がないと証言しました。この時期は、まさに桝本前市長が引退を表明し、民主党が門川氏に出馬を要請した時期です。この本の出版、大量の書籍購入と無償配布が門川さんの選挙と関係なかったなどとの言い訳が通じるはずはありません。

 不思議なことにこの本には著者名の記載がないのです。これまでの証人尋問において、実際にこの本を作成したのは誰なのかが追及されてきましたが、教育委員会も出版社も明確な回答がありません。出版社がライターだと回答していた方が前回法廷で証言され、自分が関与した時期や作業内容は全く違うと証言しました。この本は、選挙直前に大慌てで作成されています。内容からしても教育委員会関係者が執筆作業を行ったとしか考えられません。今後、この本の作成に関わった教育委員会関係者たちを尋問して真相を明らかにしていきたいと考えています。引き続き、皆さまのご支援をお願い致します。
posted by 中村和雄 at 10:24 | みなさんの意見(1) | TrackBack(0) | 裁判

2010年11月08日

門川市長尋問のおしらせ

 雇用や経済が回復しない中、抜本的政策転換を図るのではなく、市民の関心を領土問題に向けることで乗り切ろうとする財界戦略があるのではないかと穿って見てしまう今日この頃の報道です。
 ところで、京都市関連ですが、11日(木)午後1時30分より京都地裁101号法廷(大法廷)で門川市長と江口参議院議委員を尋問します。先の市長選挙の直前に京都市教育委員会が門川氏の宣伝本を1400冊定価で購入し無償でばらまいたことに対して税金の無駄遣いであるとして教育長であった門川氏らに購入代金などの返還を求める住民訴訟です。私も尋問を担当します。お時間がありましたらぜひお越しください。けっして飽きさせません。
posted by 中村和雄 at 23:25 | みなさんの意見(2) | TrackBack(0) | 裁判

2010年07月27日

裁判員裁判の呼び出し

 21,22,23日の3日間裁判員裁判の弁護人を務めました。裁判員の皆さんが本当に熱心に手続きに参加され、積極的に質問もされました。実際に体験してみて、この制度は大事に育てていくべきであること、しっかりと議論をして改善すべき点は早急に改善していくべきことを感じました。

また、せっかく大勢の方に裁判員候補者として参加してもらったのに裁判員に選定されない場合は午前中で帰されます。今回は参加候補者33人中6人の裁判員と2人の補充裁判員が選定されました。25人が選任されなかったのです。選定手続き中の待ち時間に京都地裁では、京都の景観のビデオを上映していました。候補者の皆さんに気を遣っているのですが、もったいないと思います。

 私がニューヨークで見学したときには、候補者の皆さんは30分ほど、刑事裁判とは何か、無罪の推定や検察の証明責任などをわかりやすく解説したビデオを見せられていました。
 日本でも、ぜひ、裁判員候補者に選任されたという貴重な時を、刑事裁判理解のために有効に活用することを提案したいと思います。
posted by 中村和雄 at 23:55 | みなさんの意見(0) | TrackBack(0) | 裁判

2010年07月20日

明日は裁判員裁判弁護人

 私にも裁判員裁判の担当が回ってきました。明日から3日間、京都地裁101号法廷で裁判員裁判の弁護人を務めることになりました。
 事件は、覚醒剤と大麻をたくさんの人に有償で譲渡した事案です。実刑になるのか執行猶予が就くのかが微妙な事案です。

 これまで何回も裁判所で打合せをしてきました。これまでの裁判とは違って、法曹ではない一般人である方たちが裁判に加わるということで裁判所は特別に色々と工夫したり書類の手直しを命じたりします。わかりやすいようにとパワーポイント画像を使って説明もします。弁護士も同じように工夫をしなければなりません。

 こうした改善はとても良いことです。私法への市民参加が大きく前進し、犯罪捜査のチェックも市民がわかりやすい形で実現できるのであればいいと思います。
 しかし、従来時間をかけて慎重になされていた手続きが、裁判員の負担を軽くするためとして安易に省略されてしまう危険もあります。えん罪を防ぐという最も重要な使命を蔑ろにしないようにしなければなりません。
 そしてそのためには、警察官や検察官による取調の過程をすべてビデオで録画しておきいつでも再現できるように保存しておくことが絶対に必要です。日弁連は声を大にしてその実現を求めています。みなさまのご支援をお願い致します。
posted by 中村和雄 at 23:59 | みなさんの意見(2) | TrackBack(0) | 裁判

2009年11月29日

こんな市議会はいらない!

神戸市の公金支出をめぐる住民訴訟の控訴審判決が、27日大阪高裁でありました。 
 神戸市が職員派遣先の外郭団体に人件費として支出した補助金の適否が争われ、昨年4月に神戸地裁は市長側に計約47億円の返還を命ずる判決を出していました。これに対し、神戸市が控訴し、そして神戸市議会が今年2月、判決が認めた請求権を放棄する条例改正案を可決したのでした。

 大阪高裁では、こうした市議会の決議の効力が争われました。大阪高裁は、「市側が一審敗訴後に条例改正で市長らへの請求権を放棄したのは無効」と判断し、支出の違法性を認め、計約55億円を返還させるよう市に命じました。

 住民訴訟で訴えられた自治体が訴訟の係争中に請求権を放棄して首長らの支払いを免除するケースが、全国各地で相次いでいます。住民訴訟を否定する議会の暴挙です。

 今回の判決はこうした議会の暴挙を戒めています。判決は「条例改正の議決は市長の違法行為を放置し、是正の機会を放棄するに等しい」と指摘し、「住民訴訟制度を根底から否定するもので、議決権の乱用に当たる」と厳しく非難しました。

 地方議会が本来の役割である行政のチェック機能を果たしていないとの指摘が高まっています。まして、今回のような行政の誤りを正す住民訴訟に敵対するとは、議会としての役割を放棄したに等しく、情けないの一言です。議案に賛成した神戸市議の皆さんは、議員を辞職して欲しいものです。
posted by 中村和雄 at 14:24 | みなさんの意見(0) | TrackBack(0) | 裁判

2009年05月10日

足利事件再審へ

 栃木県足利市で1990年に4才の女児が殺害された「足利事件」で無期懲役が確定している元幼稚園バス運転手の受刑者の再審請求が認められることになりそうです。
 東京高等裁判所が委託した2人の鑑定人が、いずれも、女児の下着に付着していた遺留物のDNAと受刑者のDNAが一致しないと裁判所に報告したのです。

 科学の進歩が無実を証明したと言えます。受刑者は報告のために面会した弁護士に涙を流したそうです。喜びとともにこれまでの無念が脳裏をよぎったことでしょう。
 警察・検察による自白の強要により犯人に仕立て上げられました。2000年には弁護団が最新のDNA鑑定に基づきDNAの不一致を主張したのに最高裁判所はそれを無視して刑を確定させました。再審請求を受けた宇都宮地方裁判所は棄却しました。警察、検察、裁判所は自らの捜査、裁判のあり方について十分な反省が必要です。

 いよいよ裁判員制度が開始します。審理のわかりやすさや速さだけが強調され、手続きや判断の適正さの確保がおろそかにならないように監視していくことが必要です。
posted by 中村和雄 at 22:52 | みなさんの意見(2) | TrackBack(0) | 裁判

2009年02月26日

本田さん福岡高裁も全面勝訴

 1年前の京都市長選挙に大分から応援に駆けつけてくれた本田聡栄さんをご記憶の方も多いと思います。消費者問題などで著名な弁護士が代表を務める事務所で身を粉にして働いていたのですが、代表弁護士に対しての忠誠度が足りないとして解雇された事件の原告です。
 本田さんが有給休暇を申請したところ、それを認めず休む理由を明らかにするように迫り、それに抗議した本田さんを「人間的に問題がある」などと高圧的な人格攻撃の暴言を繰り返した上で解雇したのです。

 1年前の大分地裁判決は、解雇は違法であり無効としたうえで、さらに不当なパワハラがあったとして慰謝料の支払いも命じる画期的な判決でした。被告が控訴したために福岡高裁で審理が続き、一昨日判決が言い渡されました。
 福岡高裁も大分地裁とまったく同様に、解雇を無効としたうえで慰謝料の支払いも命じました。

 本田さんは、不当な解雇によって、精神的に大きなダメージを受けうつ状態になりました。そんな中でも、自分を取り戻すために自分が間違っていないことを明らかにしたいと考え、裁判を担当する弁護士を探して九州中を回りました。ところが引き受けてくれる弁護士が見つかりませんでした。そして、遠い京都の私のところまでやってきたというわけです。
 
 本田さんのように強い人は希です。強力な力を持っている相手に対し、間違っていることは間違っていると立ち上がることは勇気のいることです。でも、そのことによって社会が変わっていくのですね。本田さんの勇気に応えて多くの支援の方が裁判を支えました。地元の弁護士さんたちも勇気を持って参加してくれました。私は、この裁判に携わる中で、大分のみなさんの大きな連帯の力を感じました。この裁判勝利を契機として、大分の人権分野の運動がさらに大きく発展することを確信しています。

 ところで、本日、相手方から上告はしないとの連絡がありました。これで、勝訴が確定です。本田さん、おめでとうございます。そして、本当に長い間お疲れ様でした。
posted by 中村和雄 at 23:53 | みなさんの意見(11) | TrackBack(1) | 裁判

2009年02月02日

斉藤ヒデさん逝去

 斉藤ヒデさんが101才で亡くなったことが報道されました。と言ってもみなさんは誰のことかと思うかもしれません。1955年に宮城県松山町で一家4人が殺害された「松山事件」で死刑判決が確定し、1984年に再審無罪となった斎藤幸夫さんのお母さんです。
 私は大学時代仙台に暮らしていたのですが、ヒデさんが仙台の一番町という繁華街の角にたった一人で立って再審開始の署名協力を訴えている姿をよく目にしていました。実は、私の大学時代の友人が斉藤幸夫さんの親戚だったことから、ヒデさんのお宅に連れて行ってもらいお話を伺ったこともありました。ヒデさんの活動がなければ松山事件の再審無罪は適わなかったかもしれません。
 ところで、私は再審を求める支援の会が主催する現地調査に参加したことがあります。刑事記録の「自供」に沿って、犯行時刻と同じ時刻に実際に現場を辿ってみるのです。自白調書では、斧で一家を皆殺しにした後、返り血で汚れた服を洗いそれを着て煉瓦工場の隅で朝まで隠れていたとのことでした。しかし、仙台の冬の寒さの中で真夜中に洗った服を着て寝ることなど絶対に不可能です。凍えてできないのです。実際に行ってみた弁護士が凍えそうになったとのことでした。こんな単純な真実が3度にわたる裁判では裁判官や弁護士たちに見過ごされ、死刑とされてしまったのでした。
 今、裁判員裁判が開始しようとしています。一般市民に何が分かるんだという批判がありますが、真実を探求しようとするしっかりとした姿勢で丁寧に追求すれば、誤判を防ぐことは職業裁判官より期待できるのではないでしょうか。透明な充実した手続きを整備することはもちろん必要なのですが、市民のみなさんが刑事裁判に参加する意義は誤判を防止するために大変大きいと言うことをぜひご理解ください。
posted by 中村和雄 at 23:55 | みなさんの意見(2) | TrackBack(1) | 裁判

2008年10月21日

刑事弁護と橋下知事発言

「人の悪口ばっかり言ってような朝日新聞のような大人が増えると日本はダメになります」 陸上自衛隊伊丹駐屯地の記念行事の橋下大阪府知事の発言です。
 子どもじみた発言ですが、橋下知事がこれほど朝日新聞を敵視するのは理由があります。橋下知事が弁護士時代になした光市の母子殺害事件被告人弁護団に対する懲戒請求の扇動に対して、裁判所は橋下知事に損害賠償を命じる判決を下しました。このことを報道した際に、朝日新聞が橋下知事に「弁護士資格の返上を」と論評したのです。そのことに対する反発です。
 しかし、裁判所が正しく認定したとおり、橋下知事には弁護士としての職務と責任の自覚が欠落しています。私も橋下知事は弁護士資格を返上すべきだと思います。
 みなさんにもぜひご理解いただきたいのが、刑事弁護人の活動です。かつて私の親しい先輩が和歌山カレー事件の弁護人として活動した際、「あんな悪い奴を庇う先生には仕事を頼めん」と言って顧問契約を切られてしまったと聞きました。よくある話です。刑事裁判において、弁護人は被告人の利益のために活動します。それは、どんなに極悪犯人であると皆が思っていても、直ちに縛り首にするのではなく、刑事裁判という適正な手続きの中で言い分をきちんと審査して、冷静に正しい判断をして処罰を決めるという法治国家としての姿なのです。その際に、法律知識のない被告人だけでは充分な活動が不可能なため、被告人の利益のために活動する者として弁護人が付されるのです。 続きを読む
posted by 中村和雄 at 23:55 | みなさんの意見(3) | TrackBack(1) | 裁判

2008年06月05日

国籍取得裁判

ブログのデザインを更新しました。いかがでしょうか。なお、従来ホームページのトップページにあった市長選挙のマニュフェストなどはこのページのリンクから閲覧できます。資料として必要な方はどんどんご利用ください。
昨日、最高裁判所は現在の国籍法が違憲であるとする判決を出しました。テレビに映ったフィリピン人の母親を持つ子供たちの割れんばかりの笑顔が印象的でした。彼ら彼女らは、父親が日本人であるのに、親が結婚していないために日本の国籍を取得できず、これまで無戸籍のまま暮らしてきたのです。最高裁判所が人権・平等という理念に照らし、外国人の母親の場合にだけ、結婚してないことを理由として子供の日本国籍取得を認めないのは違憲であるとしたことは大いに評価できます。日本の国際化が少しだけ進んだと感じます。外国人だろうと日本人だろうと、そんなことはどうだって良い、同じ人間として一人一人を尊重していく、そんな社会に早くしていきたいものですね。
posted by 中村和雄 at 23:33 | みなさんの意見(0) | TrackBack(1) | 裁判

2008年06月01日

原爆症認定大阪高裁全員救済判決

30日に大阪高裁で原爆症認定大阪高裁判決があり、仙台高裁に続き、原告全員が原爆症として救済が認められました。原爆投下から60年以上も経った今日、いまだに国が原爆症の認定を狭く制限する態度に終始していることは恥ずかしい限りです。大阪高裁判決は、先日改訂されたばかりの国の認定基準でも不十分であることをはっきりと指摘しています。
この裁判には、わが事務所の久米・塩見の2人の弁護士が精力的に関与してきました。若手の塩見弁護士は勝利の垂れ幕を持って支援者の元に駆けつけた1人です。テレビから、原告、弁護団、支援者が今回の全員救済の勝利判決を受けて、喜び、興奮している様子が伝わってきました。こうした瞬間が弁護士にとってもっとも幸せな時です。
今回の大阪高裁判決を読むと判決裁判官らの被害者に対する暖かい思いが伝わってきます。現代科学では未解明だとして、病気と被爆の関係を否定するのではなく、被爆の状況や種々の事情を総合的に検討して因果関係を判断すべきだとした本判決は、政府の被害者切り捨ての冷たい認定のあり方を痛烈に批判しているのです。
本判決の裁判長は間もなく定年退官を迎えます。この判決は、裁判官にとってきっと一生の思い出の裁判になることでしょう。原告のみなさん、弁護団、支援のみなさん本当におめでとうございます。これから、被害者の全面救済に向けて、もう一踏ん張りをお願いします。
posted by 中村和雄 at 23:37 | みなさんの意見(2) | TrackBack(1) | 裁判

2008年01月29日

同和奨学金肩代わり再度の違法判決

本日京都地方裁判所は、同和奨学金返済金の肩代わりを無審査で続ける京都市の処理方式について、平成15年度および16年度支出分についても違法とし、京都市が桝本市長に対し2000万円の返還請求をするように命じました。続きを読む
posted by 中村和雄 at 23:39 | みなさんの意見(3) | TrackBack(1) | 裁判

2008年01月25日

大分の本田さとえさん大勝利

1月17日の市民大集会に大分から応援に駆けつけてくれた本田さとえさんの判決言い渡しが本日午前に大分地方裁判所でありました。すぐに本田さんから電話が届きました。本田さんに対する解雇を無効とし未払い給与の支払いを命じるとともに、パワーハラスメントがあったとして慰謝料50万円の支払も命じる完全勝利判決です。続きを読む
posted by 中村和雄 at 23:28 | みなさんの意見(5) | TrackBack(1) | 裁判

2007年10月19日

大分の裁判

10月10日のHP更新後、一部の方からのコメント送信に障害がありました。申し訳ありませんでした。17日に大分地方裁判所で弁護士として仕事をしてきました。続きを読む
posted by 中村和雄 at 23:34 | みなさんの意見(4) | TrackBack(0) | 裁判

2007年09月18日

光市殺人事件弁護団に対する懲戒請求について

光市殺人事件の弁護団に対する懲戒請求が各地の弁護士会に大量に申し立てられています。その大きな原因がテレビのコメンテーターらの弁護団批判であり、とりわけ橋下弁護士の扇動が大きく影響しています。

私は今回の橋下弁護士の言動はきわめて問題だと考えています。皆さんのなかには突然これまでの自白を翻すような弁護方針を採った弁護団こそ悪者であると考えている方が多いのかも知れません。被害者のお気持ちに共感して弁護団に憤りを感じている方も多いのかも知れません。しかし、いつも説明に苦労するところですが、刑事事件における弁護人は被告人のために弁護活動をする唯一の存在です。警察や検察によって犯罪者とされたものが本当に罪を犯しているのかいないのかを裁判所で適正に判断してもらうのが近代法治主義です。その手続きにおいて被告人の防御のために活動する唯一の存在が弁護人なのです。弁護人は裁判官と同じ行動を取ってはなりません。あくまで被告人が無実の罪で裁かれることがないように、被告人のために活動する存在です。刑事裁判における弁護人の役割についてはわが国ではまだ十分に理解されているとは言えません。特にマスコミはひどいものです。マスコミが勝手に裁判官になってしまっています。「疑わしきは被告人の利益に」や「無罪の推定」など刑事事件の理念をまったく無視して、被告人を犯罪者と決めつけて世論を扇動してしまうのです。私は光市殺人事件の弁護団の弁護方針が正しいか否かはわかりません。しかし、弁護士として当然刑事弁護人の役割を熟知している橋下弁護士が、まったく実際の法廷活動を見ることもなしに、マスコミと一緒になって弁護団批判を扇動していることに彼の無責任さを感じます。彼が刑事弁護人としては無能であることを彼自身が証明していると言えます。

posted by 中村和雄 at 15:56 | みなさんの意見(0) | TrackBack(0) | 裁判

2007年08月27日

自治会費に寄付金上乗せは無効

自治会が寄付金を自治会費に上乗せして徴収すると決議したのは違法であるとして、滋賀県甲賀市の住民が所属する自治会を相手に決議の無効を求めた裁判において24日大阪高裁が判決を下しました。

判決は「決議による徴収は思想、心情の自由を侵害し公序良俗に反する。寄付や募金はすべて任意に行われるべきもの」と述べ、寄付金上乗せを無効としました。きわめて妥当な判決です。まだ、少なくない自治会で日本赤十字などの寄付金が強制的に集められており、判決の影響は大です。ひとりひとりがおかしいと感じることを声を上げ行動していくことによって大きな成果を生み出しました。世の中の不合理を是正していくための市民ひとりひとりの行動の積み重ねの重要性を感じました。
posted by 中村和雄 at 16:09 | みなさんの意見(0) | TrackBack(0) | 裁判

2007年07月05日

当番弁護士

今日は当番弁護士の担当日です。当番弁護士制度とは、刑事事件で逮捕されたり勾留されたりした人達から依頼があれば、すぐに面会に行って、刑事事件の手続きのことや今後のことについて説明したり相談したりするために無償で弁護士会が弁護士を派遣する制度です。先ほど山科署に行ってきました。逮捕された方は初めての経験でとても不安な様子でした。

当番弁護士は順番で回ってきます。刑事事件で逮捕された経験をお持ちの方は少ないと思います。警察の留置場に48時間拘束され、いつどうなるかも分からない中で取調だけが延々と続くのです。その後の10日間の勾留期間は延長され20日間になることがよくあります。場合によっては再逮捕ということで40日間も勾留が続くこともあります。こうした中で、不安で不安で耐えきれない精神状態の中で、警察官に言われるままに、本当はやってもいないことを自白するということもよくあるのです。
刑事事件の弁護人が悪者として報道されることが最近よく目につきます。批判があたっていると思うこともあります。しかし、本当に犯罪を犯したのか否か、それを決めるのはマスコミではなく、それを決めるための手続きが裁判です。公正で正しい裁判がなされるためには、被告人の防御の権利を十分に保障することが不可欠です。それを蔑ろにするからえん罪が生まれるのです。自分がやってもいない罪で逮捕された時のことを想像してください。「それでも僕はやっていない」の映画を思い返してください。刑事弁護人の活動への理解が広がることを希望しています。

posted by 中村和雄 at 15:24 | みなさんの意見(0) | TrackBack(0) | 裁判